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デザイン関連書籍を中心にまとめや感想を書きます

加藤郷子『あえて選んだせまい家』

あえて選んだせまい家 (正しく暮らすシリーズ)

あえて選んだせまい家 (正しく暮らすシリーズ)

小さい家での暮らしのイメージを持ちたいと思って本書を手に取った。狭い家をあえて選ぶ理由とは何なのだろうと興味をそそられるタイトルだ。

ここに登場する家は全部で8つ。30㎡〜59㎡の家である。夫婦二人家族の家もあれば、こどもとの5人暮らしの家まである。一般的な家庭のイメージからすると狭い。5人ともなれば、本当にそんなことがありえるのかとさえ思えてくる。

しかし心配は無用である。小さな工夫の数々と共に語られる当人たちの思いを読み解いていくと、既にこの狭い空間は綿密にチューニング済みだということがわかる。窮屈さを感じさせない。家族にとって必要なものもちゃんとある。生活が穏やかに回っている。一言で言うと、ちょうどいいのだ。

本書は、より良い収納だとかきれいに整頓する方法とかそういった類の事例だけを集めた本ではない。どうやってモノと向き合っているのか、家族との関係性をどのように捉えているのか、あるいはどういう暮らしが大事で何を優先しているのかなど、狭い家を選んだ人なりの人生観に触れることができる本である。

登場する8つのせまい家

  • 55㎡/5人暮らし/賃貸
    • ふとん&ちゃぶ台生活でものは少なく。厳選した古道具に囲まれた生活。
    • こどものことが好き。目の端で様子がわかるのも良い。
  • 59㎡/3人暮らし/持ち家
    • 郊外の広さよりも、都心の利便性や楽しさを優先。
    • ミニマリストにならなくて良い。必要なものはちゃんと揃える。
  • 30㎡/2人暮らし/賃貸
    • 好きなものだけに囲まれた生活が快適と思えるように。
    • 大きい家具を置いたほうが快適だと考えている。固定観念を捨ててサイズのバランス感を定義し直す。
  • 52㎡/3人暮らし/持ち家
    • 広さへの執着を捨てて、こだわりのインテリアとあこがれの立地を手に。
    • 暮らしを楽しむリノベーションで快適な住まいへ。
  • 53㎡/4人暮らし/賃貸
    • モノを減らしてラクな片付け&掃除を。忙しく働きながら気持ちのよい空間をキープ。
    • 心と時間に余裕ができて、気持ちは豊か。ていねいな暮らしを楽しむ。
  • 53㎡/5人暮らし/持ち家
    • 家族全員が一緒に暮らす時間を合宿感覚で楽しむ。
    • マルチユースと持つ持たないのメリハリ。大切なモノはあきらめない。
  • 35㎡/2人暮らし/持ち家
    • 小さい家から身軽に自由に生きる力を身につけて。自由度のある暮らし。
    • 全部を個人で所有しなくて良い。外の施設&モノを借りる。家を貸す。
  • 47㎡/2人暮らし/持ち家(著者宅)
    • 身軽で掃除がラク。多くのモノは持てない。真剣に向き合う。
    • ワンルームで広々。各スペースの行動がリンクする。

感想

一言で狭い家と言っても、想像以上の多様性と生活の豊かさがそこにはあることが伝わってきました。狭いことが全てネガティブなのかというとそうでもない。むしろ良いことさえある。生活の拠点に対する本人たちの考えに触れていると、暮らしの実践とそれぞれの人生観がキレイに繋がっており、興味深く読み進められました。

限られた空間の中で快適に暮らす知恵は、それこそ専門の設計士の手に掛かればそれなりに整えられるでしょう。しかし図面だけの話ではなく、ライフスタイル自体をどのようにデザインしていくのかという視点が心に響きました。たとえ狭くても足を伸ばしてくつろぎたいから、テレビで映画を見るのが好きだから大きなソファを置きました、というエピソードは、狭い家の文脈で読むと、まさになるほどなと思いました。ちゃんと優先度の高いものが傍にある。

さて自分は何を大事にしてどういう時間を過ごそうかと、心のアイデアをひとつ頂いた良書でした。

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