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デザイン関連書籍を中心にまとめや感想を書きます

トネ・コーケン『スーパーカブ』

スーパーカブ (角川スニーカー文庫)

スーパーカブ (角川スニーカー文庫)

小熊という名の女子高生が出会った中古のスーパーカブが、彼女の世界を少しずつ広げていく、ささやかな日常を描いた物語。カクヨムでも読めるが、文庫版とはわずかに設定が違うようだ(僕はスニーカー文庫版を読んだ)。

寄り道をしてすこし遠くに出かけてみたり、用事はないけど走ってみたり、カブの不具合に向き合ったり、天候に気持ちを左右させられたりと、新しいことに気づいた時のくすぐったい気持ちや視野が広がっていく感覚、カブの存在を静かに楽しんでいる様子などが散りばめられている。

感想

僕はバイクに乗ったことがないので、腕に伝わる振動とか風を切る感覚みたいなのを知らないのだけど、山梨の清々しい空気みたいなのを行間から感じて気持ちが良かった。ついカブに乗ってみたいという気にさせられてしまった。ゆるふわしてない確固たる意志の感じられる登場人物も魅力的です。

久しぶりのライトノベル通読。カブは生産台数1億台を突破したらしい。

関連書籍

スーパーカブ2 (角川スニーカー文庫)

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山口晃『ヘンな日本美術史』

ヘンな日本美術史

ヘンな日本美術史

本書は画家の山口晃氏が古い絵の解釈や周辺の歴史などを語るという内容の本で、ざっくり30作品ほどの日本画が出てくる。書名にもあるようにヘンな日本美術史なので、お行儀よく歴史をなぞる本ではない。筆者が勝手に見立てた先達の絵を余談も含めて記したものである。

話題の一例

  • 日本の古い絵
    • 鳥獣戯画
    • 白描画
  • 雪舟
  • 洛中洛外図
  • デッサンなんかクソくらえ
  • 明治画壇

感想

評論家ではなく画家の目線で書かれている点がユニークで、足取りの軽い文章が気持ち良い。こういう見かたもあったのかと思わせるところもあり、また、ちょっとした余談も混じって楽しく読めた。

特に雪舟の絶妙な絵画空間のはなし、洛中洛外図の作者による仕上がりの比較、デッサンの東西の話は、なるほどなと視野が広がりました。

関連書籍

山口晃 大画面作品集

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すゞしろ日記

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怖い絵 (角川文庫)

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バーバラ・ミント『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

社内で話題に上っていたのが、本書を手に取ったきっかけ。自分の考えをどのように構成したらもっと伝わるだろうか。そもそもその考え方に説得力はあるのだろうか。著者はそんな疑問の答えを探し求めて「ピラミッド構造」にたどり着く。この考えは、すでにコンサルティング業界のデファクト・スタンダードになっているという。

本書ではそのピラミッドの原理と基礎を学べ、またそれを批判的な視点で評価する術を学べる。加えて、問題解決の技術や混乱なく考えを伝えるための表現技術も学べる。

著者のバーバラ・ミント氏は、巻末のプロフィールを読むと、マッキンゼー社の初の女性コンサルタントとして入社し、ライティング、分析、プレゼンテーションなどの方法を各所で教えているらしい。

本文は4部構成となっている。

  • 第Ⅰ部(書く技術):ピラミッド・プリンシパルの原理と基礎
  • 第Ⅱ部(考える技術):自分の考えを批判的に眺める技術
  • 第Ⅲ部(問題解決の技術):複雑な事象・問題を分析し解決するための提案をつくるための手法
  • 第Ⅳ部(表現の技術):ピラミッド型に構成した考えを混乱なく伝える技術

書く技術

受け手にとって最も分かりやすいのは、主たる大きな考えを受け取ったあとに、その大きな考えを構成する小さな考えを受け取ること。送り手の情報の並べ方が、読み手の理解プロセスに沿っていないことが、わかりにくい原因である。ピラミッド型に考えを構成することが読み手の理解を促す。

  • あるメッセージは下位グループ群の要約となっている必要がある
  • 各グループ内のメッセージは同じ種類となっている必要がある
    • 同じ種類のメッセージであれば、要約ができる。
  • 各グループ内のメッセージは論理的な順序で配置される必要がある
    • 演繹の順序(大前提、小前提、結論)
    • 時間の順序(1番目、2番目、3番目)
    • 構造の順序(北から南、東から西)
    • 比較の順序(1番重要なもの、2番めに重要なもの)

導入部では疑問を明らかにする

導入部には「状況、複雑化、疑問」を含め、その後に続く文書で読み手の疑問に「答え」る。読み手が合意するであろう主題から記述を始め、その物語の中での問題を提示する。疑問はいくつかの共通パターンに収束する:

  • 何をすべきか?
    • 答えの例:方針を与える、選択肢の中から決定する
  • どのように実行すべきか?
    • 答えの例:方針を与える、ハウツーを説明する
  • それを実行すべきか?
    • 答えの例:支出の承認を求める
  • なぜそのようなことが置きたのか?

考える技術

ただ似ているという理由だけのグループ化による順序付けには論理的な関係性が見えてこない。グループ化のための論理的な分析活動を配置の順序に反映させることが重要である。そしてこの種の分析活動は次の3つのどれかとなる:

  1. 因果関係によるグループ化
  2. 構造によるグループ化
  3. 分類によるグループ化

白紙の主張を避ける

下部グループの中身が何も要約されていない「白紙の主張」は、読み手の関心を掴むことも、読む意欲を刺激することも、伝えたいことをよく伝えることもできない。

白紙の主張の例として、「組織には2つの問題がある」や「5つの変更点を提案する」といったものがある。

具体的な言葉を使う

結果が十分に具体的な言葉で表現されていれば、頭のなかでイメージできる。曖昧な上位結果は、下位グループの行動内容の妥当性を曇らせる。

要約

構造上の類似点によるグループ化は、理解を促す表現を導く。

  • ある特性を共有しており、かつその特性で関連付けられる全ての考え
  • ある結果を達成するために一緒に取らねばならない行動

なお、各結果の本質部分を抜き出すことでその作業は容易になる。

問題解決の技術

「望ましくない結果」と「望ましい結果」とのギャップは様々な影響を受けて発生している。ギャップ拡大の歴史を理解することは、その性質と重要性を理解する上で本質的である。一般的に、原因は「オープニング(現在の状況+懸念される出来事)」の記述に潜んでいる。

問題分析の構造化

一般的な問題分析はこのようなプロセスで進める。

データを収集する→調査結果を述べる→結論を導く→行動を提案する

しかし、結論や提案を効率的に生み出すためには、調査の前段階の作業が重要である。

とりあえずありったけのデータを集めてしまうという罠に陥らないために、問題分析を構造化するというステップが必要である。すなわち、なぜその問題が存在するのか、それを裏ずけると思われる理由を仮説的に考え、データ収集の作業をこの理由の検証に集中させるということである。

  • 診断フレームワーク
    • 実際に何が起こっているのかをイメージ化するのに役立つ
  • ロジック・ツリー
    • 問題解決に向けて複数の選択肢を考えるのに役立つ

感想

文章の書き方という話が多いが、一歩引いてみるとデザインと似たところがある。グルーピングの仕方とか、関係性の話とか、重要度の話とか、情報デザインに通ずるものがある。とても面白い。

1999年の発行で、約20年の時が経っているが、2017年に読んでも内容は全く色褪せていない。インターネットでも多数の言及がされている様子が散見されるし、ビジネス界隈ではすでに古典的な作品なのだろう。

経営に関する話を具体例として使っている事が多いので、そういうものに詳しくないと確かに一癖あるとは思う。実際自分はこの点難儀した。が、読み進めるに連れて、取り扱うトピック間の繋がりもみえてきて、気持ちよく読めた。平易な言葉遣いで理解しやすい。

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